スタッフ採用の際、勤務時間や給与などの労働条件を書面で提示していますか?口頭での通知は言った、言わないのトラブルに発展します。(書面での通知は、法律で義務化されています)
また、企業のルールブックである就業規則を作成し、スタッフに周知していますか?会社が望むスタッフ像をしっかりと示さずして良い人材の確保や育成はあり得ません。
労働条件通知及び就業規則の項目例
労働条件(勤務時間、給与)
スタッフの採用時には、労働条件を書面で明示する必要があります。
法律で義務づけられていますし、面接時に「言ったはず、聞いていない」はトラブルのもとです。
法律で明示が義務づけられている項目、記載した方が良い項目を以下に挙げます。
- 契約期間 『期間の定めの有無・期間、試用期間の有無・期間、採用日』
- 就業の場所 『転勤の有無』
- 業務内容
- 勤務時間 『始業・終業時刻、休憩時間、時間外労働の有無』
- 休日、休暇
- 賃金・手当の金額、締め日・支払い日、昇給・賞与・退職金の有無、時間外手当の割増率
- 定年制の有無・年齢、再雇用制度の有無・年齢、自己都合退職の場合の手続き方法
- 解雇事由
- 社会保険等への加入の有無
※当社では、採用時における労使間のトラブルを避けるため、労務士事務所としてスタッフへの採用時の条件確認も行っております。
就業規則
就業規則作成の際には、法律上気を付けなければいけないことがあります。 就業規則に必ず記載しなければいけない事項 『絶対的必要記載事項』 と、制度を設ける場合には記載する必要がある事項 『相対的必要記載事項』 が細かく区分されているためです。以下にそれぞれの項目を挙げますので、これから作成する場合、又は作成済みの場合も、是非チェックしてみてください。
絶対的必要記載事項
[ 労働時間関係 ]
- 始業・終業の時刻
- 休憩時間(長さ、与え方)
- 休日(日数、与え方)
- 休暇(年次有給休暇、産前産後休暇、育児・介護休業など)
- 交代制労働における就業時転換に関する事項
[ 賃金関係 ]
- 賃金の決定・計算及び支払いの方法
- 賃金の締切り日及び支払いの方法
- 昇給に関する事項
[ 退職関係 ]
- 退職に関する事項(任意退職、解雇、定年制などの労働関係終了事由に関する定め)
相対的必要記載事項
- 退職手当に関する事項(労働者の範囲、計算方法など)
- 退職手当を除く臨時の賃金等及び最低賃金額に関する事項
- 労働者の食費、作業用品その他の負担に関する事項
- 安全・衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰・制裁に関する事項
- その他労働者全てに適用する定めをする場合は、これに関する事項
採用、就業規則作成時のQ&A
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給料なんて実際働いてもらって実力を見なくちゃ決められない。
大体の金額は面接の時に話しているからいいのでは?採用時に勤務時間や給与を曖昧にしたまま勤務が始まると、最初の給与支払時に決まってトラブルになります。
労働基準法では、労働時間や休日、給与、退職など採用時に書面で条件を提示しなければいけないことになっています。 法律で決められているから、ではなくその後のトラブルを回避する意味でも労働条件の提示は非常に重要な手順です。 弊所では、事業主に代わり、社会保険労務士の立場から保険関係の説明も含め、採用者に労働条件の確認を行っています。 -
スタッフは10人未満だから就業規則を作成する義務はないと思うけど…
労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業所に対して、就業規則の作成と労働基準監督署への届出を義務付けています。従って労働者が10人未満であれば作成義務はないのですが、どんな事業所にもルールは存在する筈です。そのルールブックが就業規則なのです。
ルールブックがなければルールの周知は図られません。 少人数の事業場であっても労使トラブルは起こります(反対に小規模なほど多いかも)。特に資格者は権利の主張が強い場合が往々にしてあります。就業規則を作成し、権利には義務も付いて回ることをしっかりと認識してもらいましょう。 -
「変形労働時間制」という制度があると聞きました。
どのような制度ですか?変形労働時間制とは、業務の繁閑に応じて勤務時間に長短をつけて配分し、一定期間を平均して法定労働時間内に収める制度です。
この制度の利用により、時間外労働を抑えることができます。
利用しやすい変形労働時間制は、1ヶ月単位の変形労働時間制です。この制度は、就業規則を作成し、要件を定めておけば実施できます。 -
もうすぐ試用期間が終了するスタッフ。
解雇するほどではないが本採用は不安…一般的な事業所では3ヶ月程度の試用期間を設けています。
しかし、3ヶ月では人柄、能力を見極めるのは難しい。 そんな時のために、試用期間を延伸できる規定を就業規則に盛り込みましょう。また、採用時の労働条件通知書にも記載しておくとよいでしょう。 -
必要最低限のスタッフで運営しているのに有給休暇の申請が多くて困っている。
有給休暇は労働者の権利です。原則、労働者の指定した時季に与えなければいけないことになっています。
しかし、少人数の事業所や繁忙期の申請は困りものです。
有効な手段として、「有給休暇の計画付与」があります。労働者の有休日数のうち、5日を超える部分については事業主が決めた時季に与える事ができます。
活用するには、労使協定が必要となります。 また、有休申請の際のルールも作成しましょう。
例えば、「○週間前に申請すること」、「繁忙期は避けること」、「退職時には、引継ぎに支障がないよう相談の上申請すること」など。
ただし、このルールには強制力がありません。日頃から他のスタッフへの配慮や仕事への責任感を培っておくことが大事です。